PC関係の仕事をしていると「どこのメーカーのパソコンがおすすめ?やっぱり日本製のほうが良い?」と聞かれることが頻繁にあります。この質問の返答には、いつも困ってしまいます。
なぜならば、PCの場合は様々な国で製造されたパーツが寄せ集められ、組み上げられたものが完成形となるので、「国産メーカー」のイメージが強いPCでも蓋を開ければ中身がほぼ外国産のものであったり、「海外メーカー」のPCでも日本国内の工場で製造されているものもあったりと、まさに玉石混交といった感じで様々なPCが存在しているからです。
おそらく質問をしてくる方は、他の家電と同じような感覚で「冷蔵庫なら日立」「食洗機ならパナソニック」というような明確な返答を期待しているのでしょうが、PCの場合はどこのメーカーが良いとは一概に言い切れないのが悩ましい部分ではあります。
本日は「どこのメーカーのパソコンがおすすめ?」と聞かれた時に、ある程度明確な返答ができるように「国産メーカー」と「海外メーカー」のPCを様々な角度から比較していきたいと思います。
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目次
国産メーカーと海外メーカー
まずは、国産メーカーと海外メーカーを分類していきます。
国産主要PCメーカー | 海外主要PCメーカー |
---|---|
NEC | Lenovo(中国) |
FUJITSU | DELL(アメリカ) |
Panasonic | HP(アメリカ) |
VAIO(SONY) | ASUS(台湾) |
dynabook(東芝) | Acer(台湾) |
EPSON | MSI(台湾) |
Microsoft(アメリカ) | |
LG(韓国) |
これを見て「あれっ?」と思われた方は、大正解です。実はこの分類は一昔前の情報です。
現在、NECとFUJITSUはLenovo(中国)の傘下で、dynabookはSHARPを買収した鴻海(台湾)の傘下に下りました。ちなみに、VAIOもSONY本体からは切り離されて、現在はJIPという日本の別会社に買収されています。
2024年11月11日追記
VAIOは家電量販大手の「ノジマ」に買収されることが発表されました。2025年1月6日より「ノジマ」の傘下に入ります。
これを踏まえた上で、現在はこのような分布になっています。
国産主要PCメーカー | 海外主要PCメーカー |
---|---|
Panasonic | Lenovo(中国) ➡ NEC ➡ FUJITSU |
VAIO | DELL(アメリカ) |
EPSON | HP(アメリカ) |
ASUS(台湾) | |
Acer(台湾) | |
MSI(台湾) | |
Microsoft(アメリカ) | |
LG(韓国) | |
鴻海(台湾) ➡ dynabook(SHARP) |
この分布を見てもお分かりの通り、現在、日本のPCメーカーは非常に厳しい状況に立たされています。「レッツノート」でおなじみのPanasonic、おしゃれだけど価格が高いVAIO、ほとんど見かけることのないEPSON、どれもニッチなPCばかりです。ちなみに、今回はiiyama等、BTO系の国内PCメーカーは省いています。
現在のNECやFUJITSUのPCは、裏蓋を開けると「Lenovo」の刻印がされたマザーボードとバッテリーを確認することができます。つまり、デザインや設計を日本でおこない、部品の製造はLenovo(中国)が担当していることが分かります。もはや国産メーカーと呼んでも良いのか分からないレベルに達しているので、個人的にこの2社のPCを「ロゴだけ国産PC」と呼んでいます。
では、次に世界のシェアを見ていきましょう。
PCメーカー別 世界シェア
メーカー | 2023年第 2 四半期の市場シェア | 2022年第 2 四半期の市場シェア | |
---|---|---|---|
1位 | Lenovo(中国) | 23.1% | 24.5% |
2位 | HP(アメリカ) | 21.8% | 19.1% |
3位 | DELL(アメリカ) | 16.8% | 18.6% |
4位 | Apple(アメリカ) | 8.6% | 6.8% |
5位 | Acer(台湾) | 6.4% | 6.9% |
その他 | 23.3% | 24.2% |
当然ながら、日本国産のメーカーはランクインしていません。あえて言うならば、Lenovoのシェアのうちの数%はNECとFUJITSUのPCかもしれません。世界的な規模で見れば海外メーカーのPCのほうがスタンダードで、国産メーカーのPCはスマホ同様、もはやガラパゴス化していると言っても過言ではありません。
国産PCと外国産PCの性能の違い
国産PCと外国産PCに性能の違いはほぼありません。
PCの性能の根幹に関わる、CPU、メモリ、ストレージはどれも海外製のパーツが使われています。
PCの「使い勝手」という観点から見ても、操作感にも違いはほぼありません。
あえて違いを挙げるとするならば、国産PCの場合は、基盤の製造、PCの組み立て、品質検査が日本国内の工場でおこなわれているので、以下の3点が外国産PCとの相違点になります。
- マザーボードの品質
- 外装のデザイン、品質
- 初期不良率
マザーボードの品質
マザーボードの品質は「海外メーカーよりも国産メーカーのほうが優れている」ということでは決してなく、日本製であっても海外製であっても、故障率自体はたいして変わらないと思います。これは今まで故障対応をしてきた経験から言える体感的なものであって、明確なソースがあるわけではありませんが。
外装のデザイン、品質
外装のデザインは好みによる所が大きいので、どちらが優れているとは断言できませんが、一般的に国産PCはネジが多く、構造が複雑で、故障時に分解するのが難しく、逆に、外国産PCはネジが少なく、構造がシンプルで、故障時に分解しやすいのが特徴だと言えます。
外装の品質に関しては、国産PCのほうがより堅牢な作りになっていると思います。10年前の安いLenovo製ノートPCのヒンジ部分が壊れやすいのは有名な話です。ただし、最近は外国産PCの外装の品質も向上していると思います。
初期不良率
初期不良率に関しては、そこまで気にする必要はないかと思います。初期不良に当たった時に返品・交換する手間は掛かりますが、きちんと手続きをすれば、どちらも問題なく対応してくれます。また、通常使用時における1年以内の故障は国産・外国産に関わらずメーカーが保証してくれます。
国産PCと外国産PCの価格の違い
一般的に、国産PCのほうが外国産PCよりも価格が高いです。同じスペックのPCを比較した場合、国産のほうが3~5万円は高くなっていると思います。会社や事務所でDELLやHPが採用されていることが多い理由は、外国産のPCを採用することでコストカットを図っているためです。国産PCが高い理由は、以下のことが関係していると考えられます。
国産PC | 外国産PC | 備考 | |
---|---|---|---|
生産量 | 少ない | 大量生産 | 外国産PCは大量生産されているので、自ずと生産コストが軽減され価格が安くなります。 |
販売ターゲット | 日本国内 | 世界中 | 薄利多売の外国産PCと厚利少売の国産PCとイメージしていただければ、規模の違いが分かりやすいかと思います。 |
人件費 | 高い | 安い | 外国産のPCは人件費の安い工場で生産されていることが多いです。 |
プリインストールアプリ | 多い | 必要最低限 | 国産PCは年賀状アプリ、バックアップアプリ、セキュリティソフト、パソコンの使い方を教えてくれるアプリなど“余計な”アプリが最初からインストールされていて、その分も本体価格に上乗せされているので、価格が高くなる傾向にあります。 |
保証 | 手厚い | 普通 | 国産PCは保証関係が充実していますが、PC自体が昔よりも故障しにくくなっているため、そこまで気にする必要はないかもしれません。 海外メーカーのPCは、電話で問い合わせをする際に、日本語の出来る外国人が対応する場面も増えてきたので、こちらの意図が上手く相手に伝わらないこともあります。 |
新製品の入れ替えサイクル | 遅い | 早い | 一年に一度発表される最新CPUを搭載した新製品が発売されるタイミングは、外国製PCのほうが早いです。国産PCは薄利多売の外国産PCに比べて、製品の入れ替わるサイクルが遅いです。 |
決定的な違いはキーボード配列?
外国産PCのキーボードは元々、英語配列用に設計されているので、日本語配列のキーボードを取り付ける際に、キーの配置がおかしくなる機種も存在しています。キーボードの右側の部分、「バックスペースキー」「エンターキー」「デリートキー」辺りの配置が窮屈になっていたり、電源ボタンがおかしな位置に付いている機種も存在しています。
国産PCのキーボード配列にも気をつけないといけない部分は存在します。それは、キーボード左下の「Ctrlキー」と「Fnキー」の配置です。国産PCの場合は「Fnキー」が一番外側で「Ctrlキー」が一つ内側に配置されている機種が意外と多いです。
個人的には、「Ctrlキー」が内側に配置されている国産PCのほうが、右側が窮屈な外国産PCよりも使いにくいと感じるので、キーボードに関しては、国産も外国産も一長一短な部分があると思います。
結局どこのメーカーがおすすめ?
当サイトが推奨しているノートPCのスペックは以下の通りです。
パーツ | 推奨スペック(記事投稿2023年12月時点) |
---|---|
CPU | intel Core i5、Core i7 の12世代、13世代 AMD Ryzen 5、Ryzen 7 のZen4(7000番代) |
メモリ | 16GB以上 |
SSD | M.2 SSD (NVMe)512GB以上 |
ミドルレンジからミドルハイクラスのスペックです。これくらいの性能があれば一般的な用途、軽量なクリエイティブ作業程度ならストレスなくおこなうことができます。
今回は以下のスペックで各メーカーのPCを比較していこうと思います。
CPU | intel Core i5の12、13世代 |
メモリ | 16GB |
SSD | 512GB |
画面サイズ | 15~16インチのフルHD以上 |
国産メーカー比較
Panasonic
Panasonicのレッツノートは最大画面サイズが14インチなので、今回はこの時点で選択肢から外します。レッツノートは持ち運ぶことに特化したPCなので、そもそも一般用途向けのPCではないことも理由の一つです。(参考程度に、該当スペックの14インチノートPCの最安値は20数万円程度です。)
VAIO
次に、VAIOの16インチノートPCが以下の金額で購入できることが分かりました。(Amazonの規定により価格を掲載できないので、リンク先からご確認ください。)
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EPSON
最後に、EPSONの該当スペックのノートPCは、20万円前後で購入できることが分かりました。
国産メーカー比較:結論
見た目のスタイリッシュさや、価格、ネームバリュー等を含めて総合的に判断すると、
国産PCでおすすめできるメーカーは「VAIO」という結論に至ります。
VAIOと外国産PCの比較
該当のスペックを海外メーカーのLenovo、DELL、HP、ASUS等で調べた所、ネット最安値が約9万円から購入できるようです。
今までの経験から言うと、「10万~15万円前後」の予算でノートPCを探している人が多いと思うので、その予算で“まともなPC”を購入したい場合は、VAIOよりも外国産のPCを選択するほうが良いという結論に至ります。
例外として、3年以上型落ちのセール品の場合は、同じ予算で国産PCが買えることもありますが、せっかく新しいPCを買うのなら、3年以上型落ちの製品はやめたほうが良いと思います。
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結論
どこのメーカーのパソコンがおすすめ?やっぱり日本製のほうが良い?